松坂屋初代社長の別邸と闇堕ちアヒルノヒカリの毒舌 名古屋市揚輝荘 後編
前回のあらすじ
運命の悪戯か、それとも悪魔の手招きか?
ミニベロでフラフラ走るアヒルノヒカリがたどり着いたのは松坂屋初代社長の別邸。
そこは想像を絶する魔窟であった。
嫌悪感を露わにするアヒルノヒカリ。
だが・・・・アヒルノヒカリは事もあろうに魔窟の更に奥に足を踏み入れるのであった。
その先でアヒルノヒカリが見聞きしたものとはっ!?
それでは皆さんお待ちかね〜〜っ!
レディ〜〜、ゴオォォッ!!
と・・・・威勢よく書き出してはみたものの、前編より更に酷い文調になってしまいます。(泣)
ワタクシが体験した事実を誇張無く書いたものではありますが、ブログとしては笑い話のつもりで書きました。
闇堕ちアヒルノヒカリの小猥な毒舌を笑い飛ばして頂けたら幸いでございます。
不快に感じた方がいらっしゃいましたら・・・・平にお詫び申し上げます。
揚輝荘南園
元々は約一万坪の敷地内に三十数棟の建物があった揚輝荘ですが、現在はど真ん中にマンションが建ち北園と南園に分かれています。
・・・・高そうなマンションですこと。(冷笑)
金持ちがだだっ広い敷地に豪華な建物を建てて、そこを壊して新たに金持ち用のマンションを建てる・・・・ワタクシには何が楽しいのかさっぱり分かりません。
高級マンションの横に抜け道があります。
南園は入場料が300円掛かるとのこと・・・・ワタクシ、アヒルノヒカリは北園でお腹いっぱいと思っていたのです。
財布を見ると小銭は350円入っている・・・・。
行くか・・・・と思ってしまったのです。
そして到着して・・・・しまったのです。(笑)
この先には聴松閣という建物があるとのことです。
あれが・・・・変わった色合いの建物ですね。
こちらの建物にも煙突・・・・やっぱりカッコいいです。
玄関前には噴水・・・・ハウス名作劇場に出てきそうなお屋敷ですね。
これはすごくオシャレな造りですね。
おぉ、これは地下室かな?
うーむ、カッコいいな〜。
入る前は結構しっかりとワクワクしていたんですよ、本当に!
300円を払って入場するアヒルノヒカリ、するとスタッフさんが、
「丁度ガイドが始まったばかりです。」
と、加わるよう勧められました。
見るとガイドに10人程のお客さんがゾロゾロついていっています。
あぁ、ワタクシああいうのは好きではない・・・・。
丁重にお断りしたのですよ、本当に失礼の無いようお断りしたのですよ。
するとご年配のスタッフさんが、
「しかしねぇ、あなた、ただ見ただけじゃどれがどんなに貴重かわからないでしょ?」
グイグイと玄関まで押し戻されるアヒルノヒカリ。
・・・・確かにワタクシ、アヒルノヒカリは下調べをせずに色々な物を見逃し見落としてきました。
しかし、人それぞれ好みというものがあるでしょうに・・・・。
スタッフ「このドアを見てください、この大きなドアは一本のヒノキから取った一枚板で作ってあるんですよ?」
表アヒル「はあ、すごいですね。」
スタッフ「凄いでしょう、分かりますか?」
裏アヒル(うぬ・・・・。)
スタッフ「普通は両方にノブが付いているでしょう?ですがこのドアには内側にしかノブが付いていない、分かりますか?」
表アヒル「はあ、中から使用人が開けるんですね。」
裏アヒル(けっ、金持ちの奢りだ、「お帰りなさいませ、ご主人様。」ってか?けっ、メイドカフェにでも行ってろっ!)
スタッフ「玄関の床のこれ、これも一本の木が丸々使われているのですよ?」
表アヒル「はあ、すごいですね。」
裏アヒル(好きに見学させろっ!)
スタッフ「あの照明も当時のままです。当時の電気なんてあなた、電球がそのまま吊り下げてあるような時代ですよ?分かりますか?」
表アヒル「はあ、すごいですね。」
裏アヒル(キサマ・・・・。)
そう、まだ入っていない・・・・玄関の出来事ですよ、これ?(笑)
やっと解放されたかと思ったのも束の間・・・・このご年配スタッフさんはワタクシの後ろから付いてくるのです・・・・。
アヒルノヒカリが完全に闇堕ちした瞬間でした。(笑)
スタッフ「ニコニコ。」
表アヒル「ニコニコ。」
裏アヒル(キサマ、暇してるのか?)
一回のフロアには伊藤次郎左衛門祐民さんの紹介や衣類などが展示してありましたが、ワタクシはそれほど興味がなかったので素通りすると・・・・。
スタッフ「あなた、この建物を建てたのは誰だか知っていますか?」
表アヒル「あの、伊藤さん・・・・ですよね。」
裏アヒル(けっ、平たく言えばデパートの社長だろ?偉いんか?デパートは偉いんか?そんなんだから傲慢で高圧的な高額場所貸し的殿様営業して時代に取り残されたんじゃないかっ!!)
スタッフ「これも当時のものですよ、竹中工務店と書いてあるでしょ、3階の当時あった場所にはレプリカがあります、ほら、貴重な物が日焼けしてしまうから。」
表アヒル「はあ、そうなんですね。」
裏アヒル(ハイハイ、大手のゼネコンさんですね。)
おっ、暖炉だ!
スタッフ「分かりますか、それ金箔ですよ。」
表アヒル「はあ、すごいですね。」
裏アヒル(金箔じゃなくて暖炉が見たいんじゃ!)
おっ、模型だ!
スタッフ「普通は建物一つに〇〇荘と名付けるでしょう?ですがここはこれ全てで揚輝荘と言うんですよ、ほら見て下さい、テニスコートもあるでしょ、弓道場もあるんですよ、皇族の方々とかがね、沢山いらっしゃったんですよ、分かりますか?」
表アヒル「はあ、すごいですね。」
スタッフ「人間の模型も置いてあるでしょ?これね、適当に置いてあるんじゃ無いんですよ?資料に基づいて揚輝荘のとある一日が再現されているんですよ。」
表アヒル「はあ、すごいですね。・・・・ん?これは茶畑ですか?」
スタッフ「え?さあ・・・・茶室でお茶のおもてなしもしていましたから・・・・そうかもしれませんねぇ。」
表アヒル「模型の人がカゴを背負ってますよ、茶畑っぽいですね。」
スタッフ「そうかもしれませんねぇ。」
裏アヒル(おい、しっかりせんか!)
あれ、トンネルって書かれてるよ。
表アヒル「すみませーん・・・・あれ?」
裏アヒル(肝心な時に、いない・・・・だと!?)
表アヒル「すみませーん、昭和14年だと戦前ですよね?トンネルと書かれていますが・・・・これは防空壕ですか?」
ワタクシこの辺りから積極的に質問しました、無知な若造と思われるのが・・・・いや無知なんですけれども、それでも癪なんですもの。(笑)
小猥な俗物・・・・こんなアヒルノヒカリを笑ってやって下さい。
スタッフ「それはねぇ〜、伊藤次郎左衛門祐民がインドに旅行に行きましてねぇ、とても感動しまして、それでインド旅行の思い出を地下のトンネルとフロアに詰め込んだ訳なんですよ、この時代にインド旅行ですよ、分かりますか?」
表アヒル「はあ、すごいですね。」
スタッフ「それにねぇ、あなた、皇族の方々をご招待するんだから、何かあったら大変でしょ?火事とかあったら。だから避難用のトンネルにもなった訳なんですよ、戦時中も防空壕として使われたんですよ?」
表アヒル「そうなんですね〜、まだ残ってるんですか?」
スタッフ「それがねぇ、上にマンションが立っちゃたから・・・・壊されちゃいましたよ。」
表アヒル「そうですか〜、残念ですね。」
裏アヒル(マンション建てたのが伊藤家か松坂屋か土地買った別の誰かかは知らんが、金持ちがわざわざ造ったトンネルぶっ壊して金持ち用のマンション建てたのか・・・・バカバカしい。)
スタッフ「でもこの聴松閣の地下にトンネルの入り口が残っていますよ。」
表アヒル「おぉ!!」
ワタクシちょっぴりトンネルの入り口を見るのを楽しみにしていました・・・・が、なかなか凄いものでしたよ。(苦笑)
さて、フロアの隣はダイニングです。
ハイハイ、金箔ね。
ハイハイ、当時の電気は電球吊り下げなのに・・・・ね。
スタッフ「この床を見て下さい。これ、分かりますか?一つ一つ職人が掘ったのもですよ?」
表アヒル「何かの模様ですかね・・・・桜?」
スタッフ「あぁ、惜しいですね、それは・・・・藤の花・・・・だとロマンチックじゃ無いですか?ほら、伊藤の”藤”。」
表アヒル「はあ、そうですねぇ・・・・ん?藤の花は定かでは無いんですか?」
スタッフ「えぇ、でも藤の花だったらロマンチックでしょ?」
表アヒル「はあ、そうですねぇ。」
裏アヒル(おい、気分でいい加減なこと言うなよ!)
スタッフ「この暖炉の周りの・・・・これがなんだか分かりますか?これはねぇ、瓦です。真ん中のこれ、これはねぇ、蘇我馬子が建てた〇〇寺の瓦です。隣は豊臣秀吉が建てた伏見城の瓦・・・・持ってるだけでも凄いのに、こんな場所に惜しげもなく使う・・・・分かりますか?遊び心です!(露骨なドヤ顔)」
表アヒル「はあ、すごいですねぇ。」
裏アヒル(アンタの持ち物でも無ければアンタの遊び心でも無いだろ!?)
蘇我馬子の寺はどうしても思い出せません。
もう一つ瓦の話を聞いたような気がするのですが、それも思い出せません。
・・・・これがワタクシがこういったガイドを好まない理由なのです。
興味を持っていない状態、心が動いていない状態で情報だけグイグイ押し込まれても・・・・その時は「おぉ」などと感心しても数時間で忘れてしまいます。
自分が興味を持ったもの、心が動いたもの、それを自分で骨を折って調べるからこそ知識として残る・・・・ワタクシはそう思います。
自主性が無いと・・・・ただ単にガイドについて歩いて完全受身状態で話だけ聞いても分かった気になるだけです、面白くもなく意味もない。
それでは学校の授業と同じです。
スタッフ「この”べんがら”って分かりますか?この建物の壁のこの朱色の事です。」
表アヒル「はあ、そうなんですね。」
スタッフ「あなた、〇〇さんはご存知?えっ知らない?日本最初の女優ですよ?」
表アヒル「はあ、そうなんですね。」
スタッフ「じゃあ、あなた、文化の道は?えっ知らない?あなた何区に住んでるの?えっ○○区?近いじゃないの。」
表アヒル「はあ、すみません。」
裏アヒル(やかましいっ!こちとら芸能人なんぞに興味は無いんじゃ!日本最初の女優だかなんだか知らねぇが、聞いて誰もが頭を垂れると思うなよぉぉぉ!!)
スタッフ「・・・・。」
表アヒル「・・・・。」
裏アヒル(おいそれで何だ?その女優も此処へ来たとかいう話がしたいんじゃ無いのか?途中でやめるなよ!)
スタッフ「それ、床暖房です。増設したんじゃありませんよ、当時から床暖房があったんです。凄いでしょ?」
表アヒル「はあ、すごいですね。」
・・・・見えたわ。
恐らくこの揚輝荘が完成した当時、伊藤さんもこうして招いたゲストに一つ一つどれだけ貴重なのか、どれだけ凄いのか、どれがけ豪華なのかを説いて廻っていたのでしょう。
それが彼らにとってのもてなしなのでしょう。
当時招かれたVIPがどう感じたのかは分かりませんが、こうグイグイこられてはゆっくり見る事も出来ません。
はっきり言って辟易するばかりです。
貴重とか豪華とかよりも、此方がどれに心動かされるのかが大切なのではないかとワタクシは思います。
お客が主体ではないサービスはよろしくない。
営業だって扱う商品の数ある特徴をお客の興味や利点に合わせて、その一部を重点的に紹介するでしょう。
お客の興味の有無に関係なく商品の特徴全部をダラダラ説明するような商談はクソです、笑顔のお客の内心は「早く終わらないかな〜。」となっている事でしょう。
完全に営業側に自己満足的な三流商談です。
もう良いよ・・・・ワタクシは二階へ行くよ。
此方の狭い階段は使用人用なのだそうで、立ち入り禁止になっています。
こっちの方が興味があるのですが・・・・。
階段の柱をじっと見るワタクシ、アヒルノヒカリ。
スタッフ「良いところに気が付きましたね。」
表アヒル「はあ。」
裏アヒル(その上から目線は何とかならんのかね?)
スタッフ「まだ工作機械もないような時代に硬い栗の木にこんな装飾を施したんですよ、分かりますか?」
表アヒル「はぁ、すごいですねぇ。」
・・・・とにかくワタクシは二階に行くよ。(疲)
スタッフさんは二階まではついてきませんでした。(笑)
二階には書斎や寝室があります。
「べんがら」でしたか、この赤い色は品があって美しいと思います。
この和室もすごく素敵ですね、べんがらとの相性が抜群です。
洗面台。
ここはトイレだったそうです。
三階に上がれるのは立ち入り禁止の使用人用階段のみです。
出来れば三階に上がってみたかったですね、何があるのでしょうか?
使用人の部屋でしょうか?
広大な敷地に相当数のスタッフが居た訳ですからわずか数人分の部屋がこの豪華な建物の中にあるかな?とも考えられますし、深夜でも対応できるようにこの建物専属のスタッフが常駐していたのかも?とも考えられますね。
・・・・ったく、肝心な時にいないんだよなぁ!
では一旦一回に降りて、トンネル入り口が残っているという地下に降りてみましょう。
あの人に見つからないように、しれーっと降りましょう。(笑)
地下は涼しいです。
・・・・!?
うわぁ・・・・。
これ・・・・これが件のインド旅行の思い出・・・・なのか!?
如何やらあちらが地下トンネルの入り口跡のようですね。
今は無き地下トンネルにはこういう絵がびっしりという訳なんですよねぇ、マジか!?
そしてこの地下室は何とダンスホールになっています・・・・正気か!?
こ、この絵に囲まれてダンスするのか!?
怪しすぎるわ、何かの秘密結社かな!?
隣の建物とはこの通路で繋がっているようです。
う、うーん・・・・この地下が何を目指しているのかが全く分かりません。
団体の見学客がガイドについて舞台裏に入って行きました、ワタクシも行ってみましょう。
天幕が上がるところも見る事が出来ました。
ここで演奏される音楽に合わせてVIP達がダンスするという訳なんですよねぇ、この異様な雰囲気の中で・・・・。
ありがとうございました・・・・さあ、帰ろう。
帰りに寄ったコンビニで「研修中」のバッジを付けた女の子の明るく元気な声で我に返るアヒルノヒカリ。
・・・・嗚呼、まるで金持ちを妬む卑屈な貧乏人やブルジョーワを反射的に敵視するエセ共産主義的プロレタリアートにでもなった気分です。
金持ちの奢り、ブルジョーワの傲慢と一蹴してはいけません。
ワタクシ達が大切にしている文化遺産・・・・貴重な建造物や美しい庭園などは時の権力者の趣味や道楽、或いは権力の象徴や自己顕示欲の産物なのです。
日々の暮らしにいっぱいいっぱいな庶民には文化を育むゆとりなど無いのです。
下品なごった煮、不気味な異国かぶれと一蹴してはいけません。
仏教伝来、南蛮貿易、文明開化、そして日本全国各地の特殊な風習・・・・初めて目の当たりにした人々は下品に感じたり不気味に感じたりした事でしょう。
それら色々なものが混じらなければ文化が豊かに育まれる事は無いのです。
落ち着いて振り返ってみると例のあの年配スタッフさんは、もしかしたら一般ガイドでは無く施設の管理職的立ち位置の人・・・・その人がガイドを断ったワタクシに堪らず出て来たのかもしれません。
ガイドらしからぬクセのある口調や少々強すぎる揚輝荘愛もそれなら頷けます。
そしてワタクシも悪かった・・・・本来ならここに来るお客さんは松坂屋初代社長の豪華な別邸を見る目的で訪れる方々だけなのです。
ワタクシのようにミニベロでフラフラ走ってたら偶然たどり着いた、「ここナニ?松坂屋初代社長の別邸?ふ〜ん。」みたいなテキトーな人間が来る事は無いのです。
目的意識が全く違う訳ですね。
服装もミニベロに乗る為の動きやすくていい加減な格好・・・・もっと洒落た服装で訪れたら対応も違ったかもしれません。
偉いんか?偉いんか?と散々煽ったデパートについてもちゃんと書かねばなりません。
呉服屋が元であるデパート・・・・百貨店は店と顧客だけがやりとりしていた旧来の呉服屋の販売方法を改め、誰もが店頭で商品を見る事が出来るようになった画期的なものでした。
常に顧客の満足度を重視し、庶民に高品質のサービスを提供することを目的とし・・・・大型商業施設内で食事が出来るスタイルも百貨店が最初なのだそうです。
お子様ランチも百貨店の食堂が発祥なのだそうですよ。
家族で楽しめるようにと屋上スペースも創意工夫し、昔の松坂屋の屋上は動物園になっていたのだとか・・・・ちゃんと管理出来ていたのかな?(苦笑)
その昔は紡績工場くらいしか無かった女性の職場ですが、百貨店が新たな活躍の場を広げました。
百貨店は女性の憧れの仕事となり、彼女達がファッションリーダーになって流行を発信していました。
懐かしのエレベーターガール・・・・ワタクシ子供の頃にギリギリ見ましたよ。
常に新しいスタイルを創造していた百貨店、高圧的なただの場所貸しになって時代に取り残されたのは後世の百貨店であって、伊藤さん達創業者が目指した姿では無かった訳ですね。
春の揚輝荘・・・・とても勉強になりましたし、今となっては楽しい思い出です。
人同士のやり取りですから、相性とかタイミングとか・・・・色々ありますよね?